東濃の核融合科学研究所もんだい

D-D実験は核のごみ捨て場のはじまり?

重水素実験って?

公害調停申請書

★問題のポイントがよく分かります。


平成13年  月  日

公 害 調 停 申 請 書公害等調整委員会 殿

(住所省略)
申請人代理人  弁護士 籠 橋  隆 明

(住所省略)
申請人代理人  弁護士 栗 山  知

申請人らは、公害紛争処理法第26条第1項に基づき、下記の通り、調停の申請をします。

1. 当事者及び代理人
申請人  別紙目録記載の通り。

      申請人代理人
弁護士  籠 橋  隆 明
弁護士  栗 山   知

相手方   国

2.公害に係る事業活動の行われている場所及び被害の生じる可能性がある場所

(1) 公害に係る事業活動の行われる場所

岐阜県土岐市下石町322-6
文部科学省核融合科学研究所

(2) 被害発生の可能性ある場所

岐阜県土岐市、多治見市、瑞浪市、笠原町、及びその周辺

3.調停を求める事項

 相手方は岐阜県土岐市下石町322-6、文部省核融合科学研究所において、重水素実験を実施してはなら ない。

4.理 由

(1) 当事者

・相手方

 核融合科学研究所は平成元年5月に核融合プラズマについて基礎研究を実施するという目的で設置された。 同研究所には大型ヘリカル装置(LHD)が設置され熱核融合の基礎研究が実施されている。

・申請人ら

 申請人らは本件研究所が所在する土岐市、及び隣接自治体である多治見市、瑞浪市、笠原町の住民並びに本 件核融合施設により、放射性物質の影響を受ける地域の住民である。

(2) 本件の経緯

1) 核融合とは水素などの軽い原子の原子核が衝突することにより融合し、異なる種類の原子核が発生することをいう。その際に放出するエネルギー利用の手法を確 立することが本件実験の目的である。

2) 核融合は水素原子を利用するもので、同位体である重水素、トリチウムとを反応させてエネルギーを取り出す。水素爆弾はこの例である。核融合開発はエネル ギー放出を制御して発電によりエネルギーを取り出していこうという計画である。

3) 核融合過程では中性子、トリチウムの発生、利用は不可避である。昭和54年ころ、本件研究所の前身である名古屋大学プラズマ研究所の移転の話が持ち上がっ た。中性子、トリチウムに対する不安から本件予定地の住民を中心に広範な反対運動が起こった。そこで、昭和59年12月ころ、トリチウムの使用(R計画) を一時凍結するとの見解が日本学術審議会から出され、翌60年には名大プラ研は住民らに対し、トリチウム使用の核反応実験を行わない旨の計画が説明され た。

4) 昭和63年2月ころから、名大プラ研は核融合科学研究所に名前を変え、計画は進められた。本件研究所でもこれまでの経緯をふまえ、トリチウムを持ち込まな い、同研究所ではトリチウムを使用した実験を行わないとの条件で建設が進められることになった。

5) 相手方研究所が発行しているチラシなどの宣伝物でも「当研究所ではトリチウムを使用した核融合実験は行いません。」となっている。

6) 過去の経緯において、相手方研究所は再三にわたってトリチウム使用をしないとしてきた。相手方研究所は重水素実験(重水素と重水素を融合させる実験等)を 予定しているのであるが、相手方研究所は重水素実験においてトリチウムが発生すること、さらに発生したトリチウムを利用して核融合が行われることを隠し続 けていた。そのため、多くの住民が重水素実験においてはトリチウムは無関係だと錯覚することとなった。
尚、平成12年1月22目、土岐市主催の核融合コンファレンスにおいて、研究所長はこれらの経過について「トリチウムが発生することが分かっていたが、 ごちゃついてもと思い言及しませんでした。」と述べている。

7) 平成12年4月21日、相手方研究所と岐阜県などの関連自治体との間の「核融合科学研究所周辺環境の保全等に関する協定書(案)」が発表された。これは重 水素実験の実施を前提としたものであり、その実施が現実的なものとなりつつある。

(3) 重水素実験(以下DD実験という)の概要は次の通りである。

 DD実験とは、5kev程度の温度をもつDプラズマに、250kev程度の高エネルギーの水素(H)ま たは重水素(D)のビームを入射して、Dプラズマの温度を高め(これを熱化という)、これにより核融合を起こさせることを目的としている。

このDとDとの衝突によるDD核融合反応は次の反応式群で示すように(i)と(ii)の2つの反応から なりたち、トリチウム(T)と中性子(n)を発生する。

(i)   D+D → p +T
(ii)  D+D → 3He+n(2.5Mev)

しかし、この反応はこの段階で止まらず、次の(iii)と(iv)の2つの反応がただちに起こることに なる。

(iii)  D+ T → He + n(14.0 Mev)
(iv)  D+3He → He + p(水素)

この2つの反応は、DとDの反応よりも容易に起こるので、核融合研究では最も重要な研究とされている。

(iii)の反応はDT反応と呼ばれ、トリチウムの使用と同時に、14Mevという超高エネルギーの中性子を発生することになるので、多くの市民運動の 反対にあい、相手方は「トリチウムは使用しない」と約束したのである。
そこで、相手方は (i)、(ii) の反応から直ちに (iii) の反応が生じるDD実験の実施をすることにより、(iii) の反応による実験を実施することを考え出したのである。DD実験は実質的にはDT実験と言って良い。DD実験は明らかに「トリチウムは使用しない」という 約束に反する。

(4) トリチウムの危険性

1) トリチウムは水素の同位体で、水素の同位体中唯一の放射性物質である。水素の同位体であるため代謝性があり体内に蓄積されにくいとされていたが、水の形で 体内に入ったトリチウムはDNAの水素と置き換わる可能性がある。その場合にはトリチウムから発せられるベータ線が遺伝子を傷つける可能性があると指摘さ れている。特に有機化合物として体内に侵入したトリチウムは人体に取り込まれやすく、また細胞核の中にも取り込まれやすくなると言われている。

2) ところで、上記のように重水素実験の反応過程においてトリチウムは必ず発生する。また、冷却水に中性子が通過することによって新たにトリチウムが合成され る。さらに、トリチウムは温度をあげると容易に金属を透過する性質を持っている。そのためトリチウムが真空容器を透過して冷却水にしみ出してくる可能性も ある。

3) トリチウムについては除去が非常に難しいとされている。相手方研究所は真空容器内のトリチウムについて除去装置を工夫するとしているがその工夫について確 立した内容とはなっていない。さらに除去したトリチウムの保管が非常に難しいと言われており、除去されたトリチウムの保管が維持できない危険がある。
トリチウムについては冷却水あるいは遮蔽壁内に充満した空気から漏出し、大気を汚染する。相手方研究所は遮蔽壁内、真空容器内、あるいは冷却水内などの トリチウムについては除去が困難で、除去できない部分については希釈して土岐市公共下水道を通じて外部に廃棄するという方法で処理される。しかし、排出さ れる絶対量に変化がない以上、希釈によって解決できる問題ではない。

(5) 中性子の危険性

1) 重水素実験にあっては、高エネルギー中性子の発生は不可避である。本実験では大量に発生する中性子が遮蔽壁で守られているに過ぎない。遮蔽壁が何らかの理 由で崩壊すれば大量の中性子が外部に放散され被害が生じる。たとえば、LHD内には実験中、装置内には高いエネルギーが存在することになるが、炉に事故が 生じれば、行き場を失ったエネルギーによる爆発、さらには中性子漏れという事故が生じることになる。

2) 本件遮蔽壁は構造上天井部分が薄くならざるを得ず、その薄い部分を経て透過する中性子が漏れることになる。これらの漏れ出た中性子は外気中で反射し、地上 に降り注ぐことになる(スカイシャイン現象)。

3) 中性子は遮蔽壁と外部をつなぐパイプなどを通じて遮壁外部さらには施設外部に漏れ出す危険がある。

4) 本件炉から発生する中性子により炉本体はもちろん、外部装置は放射化し、放射性廃棄物となる。特に、炉で使用されるニオブの放射化が深刻である。こうして 放射化した物質により申請人らに健康被害が生じる危険性もある。

(6) 風評被害

 相手方は、これまで安全であると繰り返しのべてきたが、トリチウム発生の事実を隠すなどその言は信用で きない。このような相手方の言動、さらに危険な重水素実験により’、地域の安全性に対する信用が低下することは間違いない。それ故、本件施設による重水素 実験に伴って、風評被害も避けられないことになる。

(7) 以上の次第であるので、申請人らは相手方に対し、申請の、樫旨記載の調停を申請する次第である。

以 上

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