東濃の核融合科学研究所もんだい

D-D実験は核のごみ捨て場のはじまり?

公害調停

<報道資料>平成15(2003)年11月12日 公害等調整委員会事務局

「核融合科学研究所重水素実験中止調停申請事件」の終結について

平成15年11月12日

                      公害等調整委員会事務局

「核融合科学研究所重水素実験中止調停申請事件」の終結について

1 事件の概要

(1) 当事者

① 申請人:岐阜県外15都県の住民8,138人
② 被申請人:国(代表者文部科学大臣)

(2) 申請内容

文部科学省核融合科学研究所(岐阜県土岐市)において実施が計画され
ている重水素実験が実施された場合、①トリチウムの漏出による水質汚染、
大気汚染、②中性子の漏出による健康被害、③地域の安全性の低下による
風評被害、④高圧線による電磁波障害、⑤核融合炉爆発に伴う大気汚染が
発生する危険性があるので、被申請人国に対し、同研究所において重水素
実験を実施しないことを求める。

2 事件処理の経過

平成13年5月28日、岐阜県外13都県の住民7,895人から、岐阜県公害審査
会に対して調停を求める申請があり、平成13年7月9日、いわゆる県際事件
として公害等調整委員会に送付された。また、平成14年2月26日、岐阜県
外5都県の住民243人から、公害等調整委員会に対して同一内容の調停申請
があった。

公害等調整委員会は、調停委員会(加藤和夫調停委員長)を設置し、両
事件を併合して手続を進め、調停期日の開催(9回)や現地調査の実施な
どを通じて、当事者本人及び参考人から十分な意見聴取を行い、これらを
踏まえた上で平成15年10月2日の第10回調停期日において、別紙の調停案
を提示した。

これに対し、10月21日、申請人から、いかなる条件であろうとも重水素
実験を行うことは反対であり調停案は受諾できない旨の回答があり、他方、
10月27日、被申請人から、調停案を受諾する旨の回答があった。
調停委員会では、これを受け、当事者の主張や考え方に隔たりが大きく、
当事者間に合意が成立する見込みがないと判断し、11月12日、公害紛争処
理法第36条第1項の規定により調停を打ち切り、本事件は終結した。

(参考)
1 事件処理の経過
平成13年5月28日住民7,895人から、岐阜県公害審査会に対して調停
申請
7月9日公害等調整委員会に送付
12月17日第1回調停期日
14年2月26日住民243人から、公害等調整委員会に対して調停申請
3月5日第2回調停期日、両事件の手続併合
5月1日第3回調停期日
7月26日現地調査
9月5日第4回調停期日
10月28日第5回調停期日
12月16日第6回調停期日
15年1月7日第7回調停期日
2月14日第8回調停期日
4月22日第9回調停期日
10月2日第10回調停期日、調停案提示
10月21日申請人から回答(不受諾)
10月27日被申請人から回答(受諾)
11月12日調停の打切り決定

2 参照条文
公害紛争処理法(昭和45年法律第108号)
(調停の打切り)
第36条調停委員会は、調停に係る紛争について当事者間に合意が成立
する見込みがないと認めるときは、調停を打ち切ることができる。
2 (略)

————————

(別紙)

調  停  案

1 趣旨
(1)本件に関する経緯
本件調停申請は、文部科学省核融合科学研究所(以下「核融合科学研究所」
という。)が計画している重水素実験(以下「D-D実験」という。)の中止を
求めるものである。
核融合科学研究所は、「核融合プラズマに関する学理及びその応用の研究」
を目的として、平成元年5月に名古屋市に設立され、その後、平成9年7月に
現在の土岐市に移転したものである。土岐市への移転に関しては、核融合科学
研究所より住民に対して、トリチウムを持ち込まないこと及びトリチウムを
使用した核融合実験(以下「D-T実験」という。)は行わないことを説明して
いる。また、その発行するパンフレット等においても、トリチウムを使用した
核融合実験は行わないことを明らかにしている。

ところで、D-D実験とは、重水素(D)を用いて核燃焼に至らない段階
における高温プラズマの閉じ込め性能を改善することを目的として、重水
素プラズマに、高エネルギーの重水素のビームを入射して行うものである。
その際、陽子とトリチウムができる核反応及びヘリウム3と中性子ができ
る核反応の2つの核反応がほぼ同じ確率で起きるとされている。また、こ
れら核反応によってできたトリチウムの一部は副次的に再び重水素と反応
し(DT反応)、ヘリウムと中性子ができるとともに、ヘリウム3の一部
も副次的に再び重水素と反応し、ヘリウムと陽子ができるとされている。

申請人らは、核融合科学研究所は、D-D実験に伴いトリチウムが発生
することを隠し続け、多くの住民をしてD-D実験はトリチウムとは無関
係であると錯覚させ、実際には上記の副次的反応を利用してトリチウムを
使用することになる実験を実施しようとするものであって、トリチウムは
使用しないとの移転時の約束に反していると主張する。
また、申請人らは、D-D実験において発生するトリチウム及び中性子
について、トリチウムは、その除去、保管が技術的に極めて難しい物質で
あり、気体ないし下水として研究施設の外への漏出が避けられず、また、
中性子は、厚い壁によって遮蔽するにすぎず、何らかの事故等が起きれば、
研究施設の外に漏出して申請人らに健康被害を及ぼす危険性があるととも
に、中性子によって放射化された物質によっても申請人らに健康被害が生
じる危険性があること等を指摘している。

これに対し、核融合科学研究所は、D-T実験とは、既に米国やヨーロ
ッパで行われているトリチウムを燃料に用いた核燃焼実験を意味し、他方、
前記のD-D実験は、核燃焼に至らない段階における高温プラズマの閉じ
込め性能の改善を目的とするものであること、また、1992年3月に核
融合科学研究所が発行したレポート等において、実験に伴って発生するト
リチウムの量、副次的に起こるトリチウムと重水素との核融合反応及びそ
の他起こると予想される放射線や放射能の諸問題について明らかにしてい
ること、核融合科学研究所のD-D実験の結果、環境に出るトリチウムの
影響は自然界の放射線レベルの1億分の1程度であること、中性子に関し
ても、万一遮蔽壁に破損等の機能障害が生じた場合には、自動的にプラズ
マ実験を即時停止させることができ、その後はD-D反応が継続すること
はないため、大量の中性子が外部に放散され続けて被害が生じるおそれは
ないこと、D-D実験で発生する中性子によって装置の一部は放射化する
ものの、そのレベルは低く、健康被害が生じる危険性があるようなもので
はないこと等を主張している。

(2)調停の趣旨

本調停が申請されるに至るまでの間、核融合科学研究所は、D-T実験は行
わないと説明する一方、D-D実験に伴ってトリチウムが副次的に発生するこ
とについて明確に十分な説明を行わなかったことなど、周辺住民への説明や対
応に不十分な点があり、これによって核融合科学研究所に対する申請人ら周辺
住民の不信感が生まれ、その不信感がD-D実験への不安を一層大きくしたも
のと認められる。最近、核融合科学研究所は、情報公開等に積極的に取り組ん
でいることが見て取れるが、未だ申請人ら周辺住民の不信感を払拭するには至
っておらず、その不安は依然として大きいものと言わざるを得ない。

一方、調停手続の過程で、核融合は核分裂とは異なり、燃料の注入を停止す
れば核融合反応は停止し、反応が暴走することはないこと、D-D実験に伴い
発生するトリチウム及び中性子の環境への影響は、自然界における変動の範囲
内にとどまるものであること、地震等の災害時には実験を即時停止する制御シ
ステムが導入される計画であること等が示されるとともに、核融合科学研究所
より、当初計画を変更して、年間に発生するトリチウム及び中性子の最大量を
当初計画から大幅に削減し、既にD-D実験を実施している日本原子力研究所
那珂研究所におけるものと同程度に抑制する用意があるとの考えが示されたと
ころである。

本調停委員会は、D-D実験の実施に当たっては、核融合科学研究所におい
て行き届いた安全対策を確実に実施することはもとより、情報公開を徹底し、
地元自治体及び申請人らを始めとする周辺住民に対して十分な説明責任を果た
すとともに、地元自治体及び公正中立な第三者である学識経験者による安全性
審査への一定の関与を担保することにより、周辺住民の生命及び身体の安全性
の確保に万全が期され、また、本調停を通じ申請人らと核融合科学研究所との
信頼関係が醸成されて、申請人らが本件地域で生活をする上での安心感が回復
されることを期待して、以下の事項について調停することとする。

2 調停条項

核融合科学研究所は、D-D実験等に関して次の措置をとるものとする。

(1)D-D実験を開始する際の措置

① 核融合科学研究所は、D-D実験を開始するに当たっては、安全性を確保
するため、D-D実験により発生するトリチウムの除去・処理・処分(運搬
を含む。)、中性子の遮蔽、放射性廃棄物の管理、周辺環境の監視・測定及び
地震その他の災害時の対応・体制に関する計画(以下「実験安全管理計画」
という。)を作成することとし、その際には、関係する地元自治体(岐阜県、
土岐市、多治見市、瑞浪市及び笠原町をいう。以下同じ。)及び公正中立な第
三者である学識経験者を構成員とする技術評価会(仮称)を設置し、その意
見を尊重するものとする。

② 核融合科学研究所は、D-D実験を開始することについて、地元自治体の
同意を得るものとする。この場合において、核融合科学研究所は、地元自治
体の議会の要請に応じて、当該議会に対してD-D実験の開始及び実験
安全管理計画についての説明を行うものとする。

③ 核融合科学研究所は、上記②の地元自治体の同意が得られた場合には、
速やかに、申請人らに対してD-D実験の開始及び実験安全管理計画に
ついて説明を行うものとする。

④ 核融合科学研究所は、D-D実験の開始に当たっては、法令に基づく文部
科学大臣の検査を受けることに加え、本格的実験に先立って予備的実験を行
うこととし、それによって、コンクリート遮蔽壁、トリチウム除去装置及び
周辺環境監視装置等が所期の性能を発揮し、かつ、所定の安全性確保上の態
勢も十分機能していることを確認し、その結果を公表するものとする。

(2)各年度においてD-D実験を実施する際の措置

① 核融合科学研究所は、各年度におけるD-D実験の開始時期及び終了時期
を地元自治体及びその議会に通知するとともに、公表するものとする。

② 核融合科学研究所は、D-D実験による年間の最大発生量を、トリチウム
は1.5キュリー、中性子は3.2×10 個以内にとどめることとし、そ19
の旨を、法令に基づく文部科学大臣への許可申請の際に明記するものとする。

③ 核融合科学研究所は、D-D実験を実施する際には、トリチウム及び中性
子の発生量を測定し、測定結果(当該年度の累計発生量を含む。)を速やかに
公表するものとする。

④ 核融合科学研究所は、トリチウムの回収・保管量、処分量及び処分方法を
定期的に公表するものとする。

⑤ 核融合科学研究所は、地震等災害の発生その他周辺環境に影響を及ぼすお
それのある事態が発生したときは、D-D実験を速やかに停止し、その旨を
地元自治体に通知するとともに、公表するものとする。この場合において、
D-D実験の再開を決定するに当たっては、実験施設・装置等の損傷の有無
及び補修内容等を明示して安全性を確認した上で、地元自治体と協議するも
のとする。

(3)その他安全性の確保に関する措置

① 核融合科学研究所は、関係法令を遵守することはもとより、放射性廃棄物
運搬車両を含め、D-D実験に関する研究施設、設備等の全般にわたって安
全性の確保に万全を期すとともに、トリチウム、中性子及び放射性廃棄物の
管理技術の向上等を通じて安全性の向上に努めるものとする。

② 核融合科学研究所は、周辺住民の安全性を確保するため、地元自治体から
報告の聴取又は研究施設への立入調査の申出があった場合には、これに協力
することとし、その際に、地元自治体からの要請に応じて、地元自治体が指
名する者の立会を認めるものとする。

(4)D-T実験の禁止
核融合科学研究所は、将来においても、本件地域でD-T実験を実施しない
ものとする。

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